日 時 : 平成29年7月13日(木)18:00~
場 所 : 産業医科大学本館2号館2階 2208教室
担 当 : 産業医科大学小児科 神経グループ
テーマ: 「古くて新しい病気:熱性けいれんガイドラインを振り返って」
演 者 : 五十嵐亮太 : 熱性けいれんとはなぜ起こるのか
福田 智文 : 繰り返し因子とてんかん因子という考え
下野 昌幸 : 熱性けいれんプラスという概念
要 旨 : 熱性けいれん診療ガイドライン2015では熱性けいれんの定義を、「無熱性の発作あるいはてんかんの既往のある児は除外される」としています。熱性けいれんは純粋に発熱に伴ったけいれん閾値の低下、発熱に伴ったてんかん発作なのか、現在もはっきり区別出来ません。熱性けいれんの原因では、年齢に依存する興奮性・抑制性神経系のバランスやイオンチャネルの変異によるけいれん閾値の低下など宿主側の要因の関与が指摘されています。熱性けいれん遺伝子(FEB1~10)変異の報告がありますが、多くは大家系で連鎖解析して明らかにされたものです。また時に発熱にけいれんが先行することからサイトカインの関連が指摘されており、神経刺激作用を有するIL-1βの関与が近年報告されています。熱性けいれんの再発率は30%程度であり、3回以上起こす確率は10%程度であるためルーチンにジアゼパム坐薬による予防を行う必要はないとされています。
熱性けいれんを繰り返すと問題が起こるのかについて、熱性けいれん診療ガイドラインには記載はありません。ただし、単回の熱性けいれんと比べ、再発する熱性けいれんは言語発達遅滞のリスクとなるとする報告があります。熱性けいれんでも発作型に関しては、非けいれん性の発作(脱力、一点凝視、眼球上転のみなどの発作)が一部にみられることに注意する必要があります。再発予測因子とてんかん発症関連因子をもつ児への対応法の違いは、発熱時のジアゼパム適応基準です。再発予測因子とてんかん発症関連因子の何れの項目もジアゼパム適応基準に含まれます。再発予測因子をもつ患児とてんかん発症関連因子をもつ児への対応法の違いは明らかではありません。
この様な中、1997年に熱性けいれんプラスという概念が提案され、今やてんかん症候群の一つを形成しています。2番染色体上に存在するSCN1A遺伝子異常で多くが発生し、Dravet症候群と同一遺伝子です。各個人での対応が必要な現状を報告し、救急の対応の一助になればと考えています。