【産業医科大学小児科セミナー】
日 時 : 令和7年2月27日(木)18:00~
場 所 : 産業医科大学2号館 2階 2208教室
担 当 : 新生児グループ
演 者 : 大濱尚、川瀬真弓、柴原淳平、菅秀太郎
テーマ: ダウン症候群の最新知見とフォローアップの現状
要 旨 :「ダウン症候群の合併症を5つ挙げなさい。」これは医学教育の場で頻繁に問われる質問の一つである。しかし、臨床の現場においては、合併症のみならず、皮膚の柔らかさや筋緊張の低下といった特徴の生理学的背景について、明確な説明が得られることは少なかった。実は近年、これらのメカニズムが徐々に解明されつつある。
また、フォローアップ外来において、ダウン症候群のある児の発達が緩やかであることは周知の事実であるものの、発達のマイルストーンが体系化されておらず、診療が手探りの状態で行われることが多かった。この課題に対し、ダウン症候群における発達のマイルストーンを包括的に整理した研究成果が、昨年Pediatrics誌(Baumer N, et al. Pediatrics. 2024)に発表された。この背景には、ダウン症候群における医学の進歩がある。かつて、50年前のダウン症候群のある児の平均寿命はわずか2歳であったが、現在では60歳を超えるまでに延びている。これほど劇的な変化を遂げた疾患は他に類を見ない。
また、全出生の700人に1人がダウン症候群として生まれ、極めて多様な臨床像を呈することから、小児科医には基礎的な知識と応用的な診療スキルの両方が不可欠である。
加えて、ダウン症候群のある成人のライフコースには未解明な部分が多い。特に、うつ病やアルツハイマー病の若年発症といった精神疾患のリスクが高いことが明らかになっており、小児期から成人期への移行期医療の課題が指摘されている。これらの精神疾患への対応を含め、ダウン症候群の診療は、単なる合併症の管理にとどまらず、発達やQOLを考慮した包括的な医療の提供が求められる時代へと移行している。
本セミナーでは、これらの最新の知見や臨床的課題を整理し、ダウン症候群の診療の今後の展望について解説する。
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産業医科大学小児科学講座
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