日 時:平成27年12月14日(月)19:00~
場 所:産業医科大学2号館 2階 2208教室
担 当:産業医科大学小児科学 神経グループ
演 者:浅井完 千手絢子 石井雅宏 下野昌幸
テーマ:小児重症筋無力症
症例:12歳3か月の女児。間歇的な複視と眼瞼下垂が出現したため、近医脳神経外科を受診し頭部MRI検査を施行された。
画像では異常なく症状も軽減しておりフォロー終了になった。しかしその後複視、眼瞼下垂の悪化と両上肢の脱力、
嚥下困難も出現した。再度他院で頭部MRI検査を実施されたが異常は認めなかった。その後更に悪化したため当院を初診。
経過から重症筋無力症が疑われたが抗AchR抗体陰性、エドロホニウム試験陰性であり精査目的で入院。入院後精査を行い
抗MuSK抗体陽性の全身型重症筋無力症と診断した。血漿交換療法4回とステロイドパルス治療を2回施行し、症状は
完全寛解した。後療法としてタクロリムス3mgとプレドニン25mg内服し退院した。
重症筋無力症は、神経筋接合部のシナプス後膜上にあるいくつかの標的抗原に対する自己抗体の作用により、神経筋接合部
の刺激伝達が障害されて生じる自己免疫疾患である。本邦では重症筋無力症の全患者のうち小児期発症が約10%程度を
占めることが知られており、日常診療で眼球運動障害や眼瞼下垂の患児を診た場合、必ず念頭に置くべきで疾患である。
上記の症例を提示し
① 入院後に何がきっかけで診断がついたのか?血漿交換までした理由は何なのか?
② 眼瞼下垂や眼球運動障害を診た時の検査や鑑別はどうしたらよいのか?
③ 抗AchR抗体陽性の重症筋無力症の経過や特徴は何なのか?
④ 抗MuSK抗体陽性重症筋無力症とは?抗AchR抗体陽性の重症筋無力症と何が違うのか?
について概説します。