【産業医科大学小児科セミナー】
日 時: 令和2年1月16日(木)18時~
場 所: 産業医科大学2号館 2階 2201教室
演 者: 山口大学大学院医学系研究科医学専攻小児科学講座 教授 長谷川 俊史 先生
テーマ「小児食物アレルギーの対策と予防」
要 旨: 近年食物アレルギーの有症率は増加傾向で、原因食物も多様化しつつあり、さらに一部の症例においては難治化および重症化してきている。2012年に東京都調布市で学校給食後に食物アレルギーによるアナフィラキシーショックの疑いで小学生が死亡するという痛ましい事故があったため、教育現場においては大きな問題になっている。
食物アレルギーの治療については1990年代までは原因食物を除去し、自然寛解を期待するのが原則であった。しかし2008年にLackらが, 経皮的な抗原暴露では感作 (経皮感作) が進み、食物アレルギーが重症化していくが、一方で抗原を経口摂取することにより、無症状で摂取可能になること (免疫寛容) を誘導することができる可能性があるという、Dual allergen exposure hypothesis (二重抗原曝露仮説) を提唱した。その後もこの仮説を裏付ける研究が発表され、小児アレルギー専門医による食物アレルギー診療の主流は“食べさせない”から“いかに食べさせるか”という時代になってきた。さらに現在はその一歩先を進んで、“いかに食物アレルギーの発症を予防するか”という臨床研究が行われ、その成果が報告されている。
本講演では小児の食物アレルギーに関して、患者を取り巻く家族、医療従事者、教育関係者らが正しい知識を持ち、どのように対応するかに加え、食物アレルギー発症の予防に関する最近の話題についてお話しします。